生い立ち その０

ミリア：背後さん、名前決まりましたよね？さぁ生い立ちを！
背後：いあ、それはその―ね？
ミリア：あぁっ！どーせ私が書くんですから貸してくださいっ（メモを奪い）
背後：あ、それは―
ミリア：えぇと、『ホウレン草･卵・人参…』…って買い物メモですかこれ！？
背後：それもキッドの。名前はこっちだから。
ミリア：本当に名前のメモでしょうね…（内容確認）…それじゃ、書いてきます。

「奴らが、奴らがすぐそこまで来てるぞ！」
「どうしましょう、このままだとこの子まで巻き添えに―」
　私が生まれて間もない頃―と言っても、私の記憶にこんな会話は無い。
私が覚えてるのは、もっと後―少なくとも、１週間はあるはずである。
「このままじゃ、奴らの手で殺される―くそっ、どうすれば・・・」
　念のため。私はこんな会話は知らない。後で見つかった、日記や手紙から推測した内容だ。
「なるべくこの手は使いたくなかったが―この子を孤児として預けよう」
―と、推測できたのはここまで。
戦争―と言うより、紛争か少し大規模な喧嘩があったらしく、記録もこれ以降は無い。

「あら、この子は―？…なるほど、あなたも、なのね…。うちの孤児院に来る？
　院長が許可するかわかんないけど、戦争孤児みたいだし…。」
これは、本人―ヨーヒ、と名乗った女性―に聞いた話。
この後に関しては、特に書くことがない―というより、日記を写すだけなので省略。
ただ、私の記憶に孤児院はあまり無い―昔だから、ではなく、記憶が消えたから。
私は火事で、孤児院と記憶、そして―本当の名前を失った。
ミリア、と言うのは本名であり、同時に偽名であり、数ある名前の１つ。